浮き足立つのは女の子達。期待と絶望を待つのは男の子達。
 お店は必死で、あらゆるものを売り出す。
 いつから楽しいイベントとなったのだろうか。
 1929年の悲劇が。

 アメリカでは男性が、ドイツでは女性が、カードや花束を渡す。日本では女性がチョコレートを渡す。しかし今年は男性からも、という呼びかけが行われている。
 だが、やはりイベント好きだからか女子は作ろうと意気込む。
 オーシャンシティにいたサリーとミーシャも、なぜかチョコを作り始めた。
 2人のほかに、3体のトランスフォーマーもいる。
「それじゃあ、確認するわよ?」
 サリーの声がキッチンルームに響く。
「チョコを刻んで溶かす。そこまではできたわね? じゃ、用意してた型に流し込む」
 とろとろのチョコレートが流し込まれる。その作業をしているのは、2体だけだったが。
「トッピングして冷蔵庫にいれる。そのまま1時間くらい待つといいわ」
 パタン、と扉が閉じられる。
 ふぅ、と1体――ロードバスターが息を吐く。
「大変なものなんだな・・・」
「でも楽しいでしょ?」
 くすくすとミーシャが笑い、ロードバスターは微笑んだ。確かに楽しい。細かな作業は苦手だが、考えるのは面白い。
「俺達は基本を教えてもらったが、アイツは何を作ってるんだ?」
 ホットショットが、まだ作業をしている1体を見やる。チョコレートだけではなく、別のボウルが2個ほど置かれ、材料も2体より多い。
「さあ? 私らが来たときはすでに始めてたから」
「きっと相手の好みに合わせてるんでしょうね」
 お手上げのポーズをするサリーに微笑みながら答えるミーシャ。
「うわ、俺、味の好み知らねぇ・・・」
「ミーシャ、キッカーはあれでいいんだよな?」
「ええ」
 頭を抱え込むホットショット。若干口調が変わって唸る。
「あの、ホットショット殿はどんな味付けを・・・?」
「ん、俺好みのミルクだ。ちなみに司令官はブラックで、副司令はビター。うわぁ、ロディマス殿はなんなんだー・・・」
「インフェルノ殿は・・・?」
「アイツは甘党だからな。ミルクじゃないか? ただし、量は半端ねぇぞ?」
「そ、そうなのでありますか・・・」
 うぅー・・・となおも頭を抱え唸るホットショット。少々ロードバスターは心配になってきた。
「みんな好みがあるんだねー」
「そうですね」
 女子2人は我関せずなのでロードバスターはさらにオロオロする。

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