ルーム内には2人だけ。
パネルやキーを叩く音が響き、さっきまでの慌しい様子とはうって変わった。
最後の1枚に手を伸ばした時、1人残っていたインフェルノが名を呼んだ。
「ん?」
「今から送ります」
「ああ」
先ほどのホットショットのデータを見た時と同じ作業をして、全てを見終わると彼を呼ぶ。
「ご苦労。もう上がっていいぞ」
「は」
敬礼してムダのない動きで退室していく背を見続けていると、ドア付近まで行ったところでインフェルノが振り向いた。
「ん?」
「司令官、今日はいささかおかしいです」
やっぱり―彼には隠せないな、とグランドコンボイは息を吐いた。
「そうか?」
「副司令に関しては助かりましたが、あの人はいつもの事です。ホットショットとロディマス殿の事は司令官が1番よく、知っていられるじゃないですか」
「…私より、君の方が詳しいんじゃないか?」
「話してくれない事が多いくらいです」
「ふむ…」
「…どうされたんですか。あなたらしくもない」
またそうか? と聞いて苦笑する。こんなにも不安定でいるのは君だからだ、なんて言えない。
「…コーヒーでも、淹れて来ましょうか?」
「そうだな…頼もうか」
「了解」
プシュ、とドアが開いて閉まるとグランドコンボイは最後の1枚に手をつけた。
「彼にはごまかせないか…」
2つのコーヒーカップを持ってインフェルノは戻ってきた。
書類の束がひと山しかない机の開いたスペースに1つ置き、もう1つはズ、と一口つける。
「―、うまいな」
「……」
「スカイファイヤーとウイングセイバーは話し込んでいるみたいだな」
「まだ、戻られていないんですか?」
「…後で連絡しておくか」
ゆげが舞い、少し冷えた体を飲むだけで温められると椅子にもたれかかる。
「! グランドコンボイ司令官、ここ違ってます」
ふと目に付いた紙を手に、コマンダーチェアの側へ寄る。訂正箇所を指し示しながら近づく。
するとグランドコンボイは、
「! ああ、有り難う」
と答えながらインフェルノを抱き寄せた。