砂漠というのは極端だ。
 朝から昼にかけて幻を見せるほどに気温が上がる。逆に夜になれば一変して物を凍らせるほどに気温が下がる。
 熱中症と脱水で命を落とし、凍えて命を落とす。
 まるで絵柄の違う、コインの表裏のように。
 世界を統合した後とは言え、南に位置するトリエットは相変わらずの灼熱に包まれていた。
 ロイドとゼロスは宿屋で部屋を取ると、貴重品以外の荷物を置いて街中を歩き回る。相変わらず、ゼロスは女性にしか話しかけないが。
 オアシスまで行き、ふとロイドはその先にあるテントに目が行った。何度か通った占い師がいる所だ。
 いつ行っても無料サービス中だったが、今もそうなのだろうか。さすがにタダではないだろうが気にはなる。


 宿屋に戻り、戦利品を置くとゼロスはまだ少年が帰っていないことに気づいた。
「確かオアシスの方に行ったよな…?」
 あの先には食品と占いの店がある。食料はまだ十二分にあるが、念の為、ということだろうか。
(ないないないない。そんな小難しいこと考えねーって)
 それでも時刻は夕方。いささか遅い気がする。己と違いきちんと情報集めをする方だ、彼は。
 迎えに行くべきか、と部屋の取っ手に手をかける。するとじゃり、と音がした。
 一歩下がれば、同時に開く扉。
「あ、ゼロス。戻ってたのか?」
「ハニ〜…」
 気にも留めない様子で言うロイドに、ゼロスは脱力する。
「そうだ、今ならまだ間に合うな。ゼロス、行こうぜ!」
「え、ちょ、ロイドくん!?」
 どこに、とは聞けずにロイドは男の腕を引っ張り、宿の外へオアシスの方向へと出た。


 オアシスで見張りをしている少年も、今は休憩中なのかおらず、人もいない。
 太陽の光で湖一面が暁に染まっている。
 普段から空の色を移す湖が、別の空の色を映し出し、違う表情を見せる。
 それは美しくもあり、怖くもあるだろう。
「綺麗だろ? 戻ってくる時に見てさ。なんか、お前のこと思い出した」
「ふ〜ん…まあ、確かにな。って、ロイドくんこれ見るまで忘れてたの!?」
「綺麗だよなー」
「おいこら。こっち見ろ」
 いつものように掛け合うも、湖はその色を増す。誰にも止めることなどできない。

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