25日は王宮でパーティ。24日はそれぞれの邸で――そういうものなのだと聞かされてはいたが。
堅苦しい挨拶をしたかと思えば次の瞬間には女性陣に囲まれ、意気揚々と挨拶している紅色の髪を持つ男。
ワイルダー家の当主でありこのパーティの主催者でもある彼は、なくなるであろう制度の身分ながらも、その人気は衰えることを知らないようだった。
はあと息を吐いて、ロイドは女性に囲まれている彼に背を向けた。
クリスマスパーティを開くので帰ってきて欲しい、と久々のメルトキオでロイドとゼロスはワイルダー邸に勤める執事から頼まれた。
修道院から開放されたセレスを迎えてのクリスマスパーティを、セバスチャンとトクナガが企画したのだった。家族揃ってお祝い事をするのは楽しいということを知っていたロイドは、快く承諾した。何よりも、ゼロスとセレスを共に過ごして欲しいと思っていたのだ。
エクスフィア回収の旅でただ1人の家族を連れ回している後ろめたさもあったが、彼女が笑って送り出し迎えてくれることに何かできないかと思っていたところでもある。
神子制度が廃止になりつつも、元より貴族という立場であるワイルダー家のクリスマスパーティには、招待せざるおえない方々が少なからずいた。
貴族同士の付き合い、というのはロイドには理解しがたがいが、大企業のレザレノカンパニーを例に出されればいやでも分かるというものだ。
事実、その責任者であるリーガルに助けられたこともあった。
「ったく」
ロイドは首もとの襟を少し引っ張り、窮屈そうに息を吐いた。
上級階級のお偉い方が集まるパーティは、必然と礼服必須になる。以前に皇女を助けた経緯から受け取ったオーダーメイドの服は色々と助かっていた。
現にこのパーティでも礼服を着ていなければ浮いていただろう。ゼロスも、いつもの桃色ではなく白と黒を基調としたタキシードに身を包み、長い髪はみつ編みにしている。
遠目で見れば愛想のいいクールガイだ。くやしいがな、背が高くがたいもしっかりとしている彼はカッコイイとしかいいようがない。
ふと、彼が周りを囲んでいた女性達に手を振ってこちらへとやってきた。
「なぁに落ち込んでのよ?」
「誰が落ち込んでんだよ」
腰に手を当てやや曲げて顔を覗き込まれる。はっと笑えばデコピンをされた。
「いって!」
「もうちょっと待ってな。イイコトしてやるから」
「はあ? つか、お前セレスひとりにしとくなよな」
「大丈夫だいじょうぶ〜」
執事2人の名前を出して、ゼロスはまた女性達の下へと戻っていった。一体、何をしにきたのか。
考えても仕方なく、ロイドは豪華な食事へと手を伸ばした。