彼女が来てから3日が経った。
最初は、バンエルティア号に来るまでの疲労がたたってまる1日寝ていた彼女。2日目は安静にということで寝ていたらしい。その時に、わたしと他の女子メンバーが会った。
隠し事というのはうまく行かないのも、女子組ならではの特徴と言えるのかもしれない。
少数で集まって騒ぐ男性陣に対して大勢で集まって騒ぐ女性陣。
医務室に可愛い子がいる、なんてすぐ広まる。そうだよね、ここのメンバーみんな仲良しだもの。
「男子禁制ってどこの教会だよ…」
「ちぇ〜、どんなカワイイ子か気になったのによー」
あー、やっぱり。
事情を知ってるわたしは医務室に向かうとスパーダとチェスターが立ち往生? していた。
「お、ローズ」
「よぉ、さっそくだがよ、ここにいる子紹介してくんねぇ?」
スパーダは分かるけど、チェスターもアーチェいるんだから控えればいいのに。
「悪いけれどそれはできないわ。時機(じき)じゃないもの」
「時機? じゃあその時機ってのがすぎれば紹介してくれるのか?」
「んじゃま今日は退却するとしますか」
しぶしぶながらきびすを返すスパーダにあっさりと背を向けるチェスター。でも、仮に紹介したとしても鉄壁の防御が待ってると思うの。
2人が立ち去ったのを確認してから、わたしは中に入った。
「今の殿方は…?」
「アドリビトムのメンバーだよ。それで、どうするの?」
「……」
椅子に腰掛け、うつむくセレスちゃん。無理にベッドにいる必要はないしね。
彼女は兄のゼロスが気になってここに来た。でも、なかなか会う勇気が出ない。倒れてしまったことを、気にしてるんだろうなぁ。
「ローゼス、さん…でしたわね」
「うん。みんなはローズって呼んでる」
「あなたは…わたくしと、お兄…いえ。神子様との関係をご存知のようですわね」
本人いないんだから呼んでもいいと思うんだけどなぁ。ん、むしろいた時に呼んだほうがいいよね。
「知ってるよ。でもみんなには話してない。それに、ギルドのメンバーはそれぞれ複雑な事情を持ってる人もいるから」
「…差し当たりなければ、話していただけます?」
***
わたしはこれまでの事を話した。世界樹が危機に瀕していたことは神官の家系なだけあって気づいていたみたい。執事を通して兄の様子を知っていたというのもあるけれど。
アドリビトムでちょっとしたことがあった、直接言ってしまえばファブレ家などの事情とか。
正直にわたしも自分のことを話した。隠す必要なんて、どこにもなかったし。
「そう、でしたの…」「ここはあくまでギルド。だから身分なんて関係ないしね、みんな普通に接してる。気が置けないんだと思うの」
苦笑交じりにセレスはそっと息を吐いた。彼女のことを知っていたとは言え、本当に可愛いな。
「ローゼスさん」
「ん?」
しっかりした顔つきでわたしを見るセレスちゃん。
「わたくしの依頼、受けてくださいます?」
「もちろん」
断る理由なんてないし、彼女の依頼はどちらかというとクエストというよりも、頼みごとに近かった。