いつも思うけど、強敵が出るところってどうしてこう遠いんだろう…ちょっと疲れちゃった。あ、セーブポイントある。
「なあカノンノ。なんでそんなに気になるんだ?」
「真夜中の夕日のこと? んー…眠れないときにね、散歩がてらに甲板に出たんだ。その時に偶然見たんだけど、すごく綺麗でね。ココロが安らいだんだ」
にっこりと笑ってカノちゃんは答えた。
「そっか。俺もそう思うしな!」
「ロイドも見たことがあるの?」
いい笑顔で答えたロイドくんはくんってくるけど、それは失言…。ゼロスくんも無言で見てるし。
「あ、いやっ、カノンノがそう思うならそうだろうなって!」
両手を胸の前で左右に動かして否定するけれど、ロイドくん。それは否定じゃない。
討伐する前に回復しつつ、2人は談笑しはじめた。
「緊張感ないね〜」
「いいの、ゼロス? カノちゃんが言ってる『真夜中の夕日』…」
「…いーんじゃねぇの? どうせ来るべき時期(とき)がきちまっただけなんだしよ」
そういうわりに、悲しそうな顔しないでほしいな。知ってるから余計に分かっちゃう。
2人が準備できたと言ってきたので、わたしも剣を構えた。
今回はモンスターを倒す、ってだけだったんだけど…。
「カノちゃん!」
「しまっ…た!」
ヒットポイントがつきたと思った敵は最後の力を振り絞ったのか、近くにいたカノちゃんに襲いかかった。
カノちゃんをなぎ払おうとしたモンスターの手はロイドくんのガードに阻まれ、懐に飛んだロイドくんとわたしの攻撃に敵は倒れた。
今度は確実に消滅して、コロンとひとつの鉱石が落ちているのを確認する。
「カノンノ!」
振り返れば、ゼロスくんに抱えられているカノちゃん。無事なのを認めれば目を見張った。
きらきらと輝く夕日色の、羽。
ロイドくんは鉱石を拾ってきゅっと握り締める。あれ、エクスフィアだったんだ。
「ゼロ、ス…?」
「カノンノちゃんのお肌に傷がつかなくて良かったぜ」
ゆらゆらと動く羽。コレっちと同じでいてどこか違う。
あ、まだ何かいる!
「ロイド! 奥に感じる!」
「なに!?」
ゆっくりと、奥からモンスターが出てきた。…違う。
『新しい記憶』で見た名前。これは…
「エクス…フィギュア…?」
***
「刻め、ラブ・ビート!」
「喰らえ、天翔蒼破斬!!」
カノちゃんとロイドくんの秘奥義が炸裂する。それでもエクスフィギュアは倒れない。わたしは撃(う)ったばかりだし、あとは…ちらりと彼を見れば詠唱していた。
オーバーリミッツの光が見えるから、邪魔させないようにしなきゃ。
「ロイドくん、コンボいくよ!」
「おうっ!」
なりふり構ってられないからTP消費激しいのばかりやってるけれど、通常も交えてるから切れることはないんだよね。
「くらいな! ディバイン・ジャッジメント!!」
蒼色の空間が広がり、光の柱が降り注ぐ。そして下からは光の反射で地面が揺れる。
いつみても綺麗だけれど、その中でもひときわ輝く橙色。めったに見られないから、余計にそう思うのかも。