気力をふりしぼって、柄を握り直したわたしを、光が覆った。まぶしくて、半眼になればその光はわたしだけではなく、その間全体を覆っているようだった。
室内なのに、太陽のように光り輝く、すごく暖かいもの。
「我が呼び声に応えよ、ルナ!」
ぼんやりと、三日月に乗った女性の姿が写る。でもそれは帽子をかぶった人の陰で全体を見ることはできない。
「…あいつは…」
体を起こそうとするセルシウスの呟きに、わたしは彼女に肩を貸した。
しゅんっ、とジャバウォックは姿を消し、女性もこちらを一瞥(いちべつ)したあと姿を消した。
ゆっくりとゲーデも体を起こす。
「召喚士…契約していたのか」
「しょうかんし…?」
ゆっくりと帽子をかぶった人がこちらをむく。
「セルシウスか。実体化しているとは聞いていたが、こうして会うことができるとはな」
ちょっととんがった鍔の広い帽子を目深にかぶった人は、目元と両の腕に独特の文様を、描(えが)いてるのかな? 独特の衣装につつまれ、銀色の髪が凄く似合っていた。
「とりあえず、お前が所属するとかいうギルドに行くか。案内を頼めるか?」
こくりと頷けば、片膝をついているゲーデに手をさしのべる。この人、ちょっと変な格好だけど優しいんだなぁ。
人間の手なんか借りるか、っていう感じでそっぽを向いていたゲーデに笑いかければ、しぶしぶながら肩をかしてもらうことにしたみたい。
アドリビトムに戻って、わたしは思い出した。
『新しい記憶』にいる、帽子を被った召喚士。ゼロスくんとジェイドが立てたあれに手紙を送った人。
「ほう、なかなかいい船じゃないか」
「当然です! …って、ローズさんその方は…?」
「ネガティブ・ネストで助けてもらった。えっと、報告の前にチャット、医務室借りるね」
今は何より、セルシウスとゲーデを休ませないと。