アドリビトムのメンバーとの紹介が終わって、わたしは食堂でクラースさんと向かい合っていた。
「さて…一度名乗ったが、あらためて自己紹介させてもらおう。君がいろいろ知っていることも承知の上で、だが」
『新しい記憶』でみんなの忘れていた記憶を呼び起こしたことだろうなぁ。わたしは頷いて先を促す。
「ガレット村で穢れ流しの儀が行われているのは知っているな? ならば他の場所にも精霊が存在し、そういった行為を行っているはずだと私は仮定を立てた。だが、実際ガレット村以外に精霊が姿を現したという報告がないのだ」
「…………」
「神子、マンダージ遺跡と調べたがどれも精霊とは結びつかない。ならば、人と会ったことのない精霊とどうにか近づけないかと私は彼らを研究した」
「それで、体にペナントを」
「そうだ。本来ならば人間はマナを持つが扱うことはできない。魔術が使えるのは才能ともいうべきだろう」
記憶がなくても、ゼロスくんは「魔導注入を受けた」と言っていた。それと、同じことだろうな。
「光の精霊・ルナと契約したことで今回の事柄がわかった。…遅くなってしまった、クラース・F・レスターだ。よろしく頼む」
すっとクラースさんは右手を差しだし、わたしは握り返した。
「イード・ローゼス。みんなはローズって呼んでる」
「…ロゼもローズも薔薇の意味だな。ならば私もそう呼ばさせてもらうか」
「あと、あだ名で呼んでたりする」
「聞いたよ。君の呼びやすい方でかまわない」
食事時になって、向かい側に座ったゼロスくんが
「それで、ペナント召喚士さんはどう呼ぶことにしたんだ?」
と聞いてきた。
彼の隣では苦笑しているクレスくん。わたしの隣にはステーキを放ばっているロイドくん。あ、サラダのプチトマト、転がってった…。
「ゼロイみたいな感じで考えてたんだけどさ、なんか違う気がして」
「それってゼロスの名字と会わせたやつだったよね。今は別の意味でも使ってるようだけど」
「まとめるなって言ってるんだよ。パニール、おかわり!!」
「ハニー、落ち着いて食わねぇと喉つまらせるぜぇ?」
そうゼロスくんが言った瞬間、つまらせるロイドくん。お約束だなぁ。パニパニがお水を渡して流し込む。
「クラースさんの本名で、組み合わせたんだよね」
クレスくんの言葉にうなずく。
「F・レスターだから、クラレ…ってしたんだけど、違うなぁって」
「…どっかの動物の名前みたいだな」
「だから、ラースって呼ぶことにしたの」
「それはそれで別人みたいだね…」
苦笑するクレスくんにわたしは苦く笑った。