目が覚めると体が軽くなっていた。両手を見ても、薬品棚の透明窓を見ても、光っていなかった。
 食堂に行けばパニパニとクレア、リリスちゃんがのんびりしていて、2人が気づくとハーブティーとピーチパイを頼んだ。
 ほんとは一緒にお茶するくらいにしとこうかなって思ったんだけど、せっかく起きたんだからって言われて。
「そういえば聞きました?」
「んむ?」
 ピーチパイを作りながら、クレアが淡々と言う。
「今、みんな仕事をいっぱいして、宣伝してるんですよ」
「そうなんだ」
 一応、っていう形で機関室に顔を出した。チャットにまだ休めって言われたけれど寝てるばっかじゃ申し訳ないから、せめて船内だけでも歩くって言ってるんだよね。
 ディセンダーが倒れたことで、アドリビトムの知名度が一気に下がったらしく仕事が減ってるらしい。
「それだけじゃないんですけどねぇ」
 ことっ、と焼きあがったピーチパイをリリスちゃんがおいてくれた。
 パニパニは苦笑しつつ、ティーのおかわりを入れてくれた。
「何?」
「ゲーデが、ローズさんのマナを半分持ったんです」
「えっ…」
『負』の化身であるゲーデが、わたしのマナを…? どうして…。
「カノンノが止めたらしいんですけど、間に合わなかったらしくて…」
 彼がマナを持つことは危険。いくら『負』を浄化したからといっても、彼が『負の化身』であることは変わらない。
 今はまたどこかに行っていて、みんな居所を知らないらしい。
「今度会ったら、お礼言わなきゃ」

***

「すごいマナの量…」
「っくは! これがローズちゃんの抱えてるマナかよ。こりゃきついぜ〜」
「形容量以上を抱えて動いていたのだからな、アレは…」
「あの人、苦しくなかったのかな…」
「…世界樹の意志を読みとった」

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