安静に、ということでわたしの自室は今医務室になっていた。
 ゲーデにマナを半分持ってもらって、幾分か楽になったとはいえ、本調子じゃないだろうっていうニアタの判断。
 時々お見舞いに来てくれるカノちゃんやギルドのメンバーと話しするから退屈はせずにすんでいたんだけどね。
 廊下に出ると何やらざわついていた。
 ホールに出ると、チャットと向かい合わせに背丈の大きい男性が座って、パニパニが淹れたんだろう紅茶を飲んでいた。
 チャットははたから見てもがちがちに緊張しているみたいだったし、ホールにいるロイドくんやコレっち、リフィにジニ、プレプレ、ゼロスくんそしてクラトスは平然としているのに、クレスくんやスパーダとか他のみんなはこそこそと話している。
 …あれ、もしかしてギルドのメンバー大集合?
 とりあえず、カノちゃんに声をかければみんなが一斉にわたしを見てチャットに早くと手招きされる。
 男性はティーカップを置くと、ゆっくりと立ち上がった。
「ロイド達から事情は聞いている。この様な格好で失礼するが、どうか許して欲しい」
 低い、威厳のある声。
 そっか、彼は。ここでもこういった立場なんだ。
 がっしりとした体躯は、白い服を着ていても分かる。サイズがなかったのか、それともそういうものなのか、割れた腹筋が見えていて、特徴あるズボンとプレートの様なものがついたブーツを履いている。
 水色の長い髪は腰のあたりで軽く、リボンで結ばれているけれどそれがまた似合ってる。
 でも、一番目立つのはお腹の辺りでだらんと下げている両腕。そこには黒くて太い、手錠。
 それをつけている意味を知っていたから、わたしはこくんと頷いた。
「ありがとう」
 そう言って、彼はゆっくりと腰を下ろした。
 なんでここにいるのか聞こうかと口を開いたら、勢いよく科学部屋の扉が開いてラースが姿を現した。あれ、篭(こも)ってたんだ?
「リーガル・ブライアン会長が来てるとは本当か!?」

***

 以前、わたしが調査しに行った鉱山。そこの開かずの扉は彼、リーガルこと会長でなければ開けることができない。だから、知り合いだったロイドくん達が探し出して彼を連れてきてくれた。
 ここでもやっぱり牢屋に入ってたんだけど、ディセンダーに協力してほしい、って言ったらあっさり出られたんだって。手錠は彼の意思でつけてるらしい。うん、その理由は『新しい記憶』で知ってるけどね…。
 とりあえず、乗船したばかりというのもあって明日、その鉱山に行くこととなった。
「じゃあ、やっぱりわたしのこの状態は」
「増えすぎたマナによる負荷…マナの過剰摂取とでも言うべきか」
 展望室のカウンター席に座る、わたしとクラトス。そしてニアタ。
 ニアタは言いにくそうに、そう答えた。
「世界樹の周りもマナに溢れていた。神子たちですらつらいほどの、な」
 カラン、とクラトスの持ったコップの中にある氷が鳴った。マンダージ遺跡に行っていたって聞いたけど…そっか。

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