「ローズっ!」
「無茶をするからだ、この馬鹿が…」
「ゲーデ、『負』は…?」
「……無くなった。いや、世界樹に戻ったと言うべきか」
「ん…」
――ゲーデが、わたしの体を支えて立ち上がった。…そっか、気を失ってたんだ。
「ありがと、ゲーデ」
「そんな身体の癖に…訳のわからん奴、だ」
あきれる彼に苦笑する。すると、今度はゲーデが前のめりに倒れてしまった。
「ゲーデ!?」
彼を仰向けにすると、息が荒く青ざめて身体もぶれ始めていく。
戦闘で疲れたからじゃない、
「どうして…!?」
「…! マナだ!」
ラースの言葉に、わたしと会長は彼を見る。
マナ。ゲーデにマナはない。彼は『負』の化身だから。でも、微量にはあるだろうけれどそれだけで、こうなるかな…。
こうしている間にも彼の身体は透き通り、ぶれも収まらない。このままだと――
「そうか。ローズ、彼は君の増えすぎたマナを半分持ったと聞いた。彼が消えかかっているのは、そのせいだろう」
会長のゆっくりとした、でも余裕のない声がわたしに響く。
そうだった。あふれ出したマナを彼が。
「待ってて、ゲーデ。すぐ楽になるから」
彼を横たわらせて、わたしは瞼を下ろす。
両手を彼にかざし、意識を集中させる。これで、あとはだいじょ、ぶ…。
『……!!』
目が覚めると、心配そうに覗き込むカノちゃんとパニパニ。
上半身を起こして辺りを見れば、そこが甲板なんだって分かった。
「大丈夫? ローズ」
「うん。あ、報告…」
「それならクラースさんとリーガルさんが行きました。あの子も無事ですよ、ほら」
小さな手でパニパニが指す方向には、カノちゃんがいつも座っている定位置にゲーデが片足を立てて腰を下ろしていた。よかった、もう消えないね。
笑いかけると、彼はそっぽを向いてゆっくりと姿を消した。またどこかに行ったんだろうな。
かつんと音を鳴らして、まるで入れ替わるようにクラトスとニアタが上がって来た。
「落ち着いたようだな」
「うん」
「カノンノ。すまないが我々だけにしてくれないか? あとで説明する」
「…分かったよ、ニアタ。パニール、いこっ」
「ええ…」
2人がいなくなったのを確認して、クラトスが口を開いた。